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@喪女板
727 彼氏いない歴774年 sage 2011/12/09(金) 02:38:09.94 ID:n6SkeH9z
長い。しかも私が象。相手はジジイ。
喪子は世にも珍しい人間の言葉がわかる水玉模様のインド象。
実際は遺伝子操作で作られた象の形をした似て非なるものなのだけれども、
世間体を考慮し大自然で発見されて保護しましたという名目で動物園に入れられる。
珍しい喪象はニュースでも世界的に取り上げられ連日連夜人が押しかけ見世物に
される毎日に喪象は疲れ果てる。
唯一の心の癒しは定年間際の飼育員のお爺さん。
今まで見たこともない奇妙な水玉模様の象の世話をしたがるものは誰も居らず、
その面倒は後数ヶ月で定年退職を迎える古株とは名ばかりの気の弱い老飼育員に
押し付けられた。
なまじ人の言葉が分かるだけに、飼育員達の
自分に対する"率直な"感想は耐え難いものだった。
「何の病気だろう?」
「かわいそう」
「これでつがいができるかな…ずっと一人ぼっちなんて…」
悪意のない言葉とは分かっていても喪象は傷ついた。
その中でただ一人
「なに、女の子はおしゃれな方がいいさ。水玉なんてウマにだって真似できない」
と、喪象の水色とピンクの鼻を撫でながら言ってくれるお爺さん。
喪象はこの老飼育員に恋をしていた。
喪象は人の言葉は分かるものの、話すことはできない。
お爺さんの問いかけに脳内で答えてはパオンヌ。
朝はおはようと言われてパオンヌ。
仕事終わり「また明日な」と手を振るお爺さんに
「(行かないで)」と脳内でつぶやいてはパオンヌ。
話しかければ必ず返事をするように鳴く喪象をお爺さんも子供のようにかわいがっていた。
ある日、お爺さんは片手にポラロイドカメラを携えてやってきた。
「喪象。お前にな、折り入って頼みがある。写真のモデルになってもらいたいんだ」
真剣な顔つきに喪象は一瞬ドキッとしたものの、話は
「離れたところに住んでいて喪象を見に来れない孫娘にもお前の姿を見せてやりたいんだ」
というものだった。喪象は元気よくパオンヌした。
お爺さんも喪象も子供のようにはしゃぎながら写真を撮り、撮れた写真を確認しては
「これは可愛い」「これは美人だ。隣の檻のサイが放おって置かねえぞ!」などとふざけ合った。
喪象はこんな時間がいつまでも続くといいな、と鼻を巻きながら思った。
728 彼氏いない歴774年 sage 2011/12/09(金) 02:38:47.72 ID:n6SkeH9z
続き
それから一週間も経たないある日、事件は起こった。
朝からため息を吐き。悲しそうな顔で檻にやってきたお爺さんは心配して駆け寄る喪象の鼻を
いつもの様に撫でながら、流行りのキャラクターもののかわいい便箋に書かれた手紙を開いた。
そこにはカラフルなペンで、
「かわいいとおもったのに、学校でスキな男の子がぜんぜんかわいくないって!」
「そんなぞうなんてキライ!おじいちゃんもだいっきらい!」
「おじいちゃんのわるぐちもいっぱい言われた」
「学校で変なぞうの家の子っていじめられた!」
という文と、喪象と思われる水玉模様の泣いている象のイラストが添えてあった。
「頭のいい優しい子なんだけどな。まだ子供だからなぁ。
お前を元の色に戻せっていうんだよなあ。…こんなに可愛いのになあ」
お爺さんは悲しそうに、喪象の鼻を優しく撫でながら言う。
その日の夜、喪象は身体に泥と砂を塗りたくりながら、
うずくまってひたすらに眉間に力を入れ願った。
「(どうかこの体を灰色に…灰色に…)」
すると背中にじんわりと痛いような、熱いような感覚が広がって行く。
喪象は元々は作られた生き物。象の形をしていている人造生物なのだ。
「(あの時のことを思い出せ…私が象になる前のこと…
もっとぐちゃぐちゃで何の形もなかった時…私はどうやって象になった…)」
喪象は眉間の奥。頭の中にある核心に力を込める。
「(あの時の感覚を思い出して体を変えるんだ…灰色に…できる、きっとできる…!)」
喪象はずっとずっと昔、自分がまだ魚の白子のようなあやふやな形をして、
研究所の試験管に入っていた時のことを思い出していた。
目の前で交わされる会話。いつから意識を持ったかは覚えていないが、
喪象はその会話に「自分も混ざりたい」と思っていた。
いつか自分もここから出て、あの同じ姿をした生き物たちのよう
に誰かと肩をつつきあい、同じような笑い声を上げてみたい。
その一心で喪象は様々な形に姿を変えてきた。
「人間の好きな」猫そっくりの目、チワワのような犬歯、アロワナのうろこ、
それはまとまりのつかない奇妙なパーツの集合体だったが、着実に生き物の形に近づいていっていた。
そしてある日、喪象はある研究者の持っていた携帯ストラップに目を奪われた。
かわいい!これかわいいね!そう女性研究者たちの話題の中心に上る
そのマスコットは当時流行したピンクのファンシーなゾウ。
淡いパステルのピンクに水色の睫毛が書かれたつぶらな瞳。
頭にお揃いの水色の花をつけたゾウのキャラクターは、喪象の心を捉えて離さなかった。
次の日の朝だった。喪象がこの、今の奇妙な姿に形を変え始めたのは。
「(そうだ!あの感覚だ!目の奥のほうに思い浮かべて…力を込めて…)」
暗がりの中で、喪象の体表がねちゃねちゃと粘液状に波打ち始めた。
729 彼氏いない歴774年 sage 2011/12/09(金) 02:46:44.01 ID:n6SkeH9z
エンディングは
不完全に変態して朝になったら喪象死んでしまうパターンと、
ここでコツを掴んで爺さん退職後に爺さんの死別した嫁(ばあさん)の姿になって会いに行くパターン
うまく自分の姿を変えられたけれども突然体の色が変わったことを気味悪がった爺さんに絶望して、
粘液状に溶けて動物園を脱出し憧れだったマスコットに擬態しておもちゃとして子供に買われる
パターンがある。
頭の中でモヤモヤたまってるものが書けてすっきりした。
あー私も変身してえ。猫に。
おい正論やめろww
しかし水玉模様で人間の言葉が解る象さんなんて
現実にいたら大人気なような気もする
( ゚∀゚)人(゚∀゚ )ナカマー!
パオンヌ可愛いよパオンヌ(*´∀`*)
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