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@801板
768 :風と木の名無しさん:2011/11/09(水) 00:16:37.55 ID:obO0eJ8A0
このあいだ風邪ひいて以来まったく食欲が無い
もう一週間程水とスポドリとゼリー状栄養食くらいしか
口にしてないのに全く普段と調子が変わらない
これはあれか、体が緊急モードになって余らせてた脂肪を燃やしているのか
それとも腐りすぎてとうとう人間から妖怪にモードチェンジしたのか
わたしは シキ フジョシ こんごとも よろしく……
妖怪になれたのなら百鬼夜行に混じってみたい
そしてうっかり目撃してしまったそのへんの人をおどかしまくりたい
笛やら太鼓やらの付喪神と仲良くなってそれを伴奏に歌ってみたり
一反木綿ぽい奴に乗っかって鬼太郎ごっこしたり
調子のって歩いてたらお坊さんがお経唱えてて大慌てしたり
日が昇る時間になったらお疲れーとか言いながらハイタッチして闇の中に散っていく
病気もなんにもないらしいから(そのわりに目玉の親父(本体)病気で死にかけてたけど)
明日の心配なんかせずのたのた暮らしつつ最近俺らに気づくやついないよなー脅かし甲斐が
ないよーとか妖怪仲間と愚痴り合って時には退治されかけて冷汗かいたり
そして同じように人間から妖怪と化した青年の話を聞く
青年はもともと名のある家に生まれた長男で、生まれる前から既に婚約者もいるような家だった
けれど彼は季節の変わり目には体調を崩し、冷たい風に当たれば寝こんでしまうほどに体が弱く
勉強も自室に教師を招いてする始末といった状態では婚約者はおろか家族すら存在は朧だった
賢く優しかった彼はそれでもいつも弱い自分を跡継ぎとして抱えてしまった家を案じ
そんな家に嫁がなければならない婚約者のことも案じていた
769 :風と木の名無しさん:2011/11/09(水) 00:16:55.78 ID:obO0eJ8A0
けれど彼が純粋に一人の人間として気にかけていたのは、心を向けていたのは
婚約者よりも家族よりも長い時間を共に過ごしている、一人の奉公人の少年だった
身分の低い生まれの少年は学はなかったが仕事には真面目で失敗もなく
また少し時間が開くと彼の知らない外のことなどを面白おかしく語ってくれる
彼は最初はくるくるとよく働く少年を、次に少年の話を、やがて少年自身を大切に想うようになった
しかし彼の命を狩りとらんとする死神の鎌は時とともに彼の身を蝕んでいく
そしてある寒い夜、風邪をこじらせて肺炎を患った彼は高熱を出し生死の境を彷徨っていた
ああ、死ぬのか。そう思ったその時、ふいに彼の耳に不思議な声が響く
本当にそれでいいのか、諦められるのか、ほかの何を諦めても、あの少年のことを諦められるのか
その声に彼は揺れる。死期が近いことを悟ってから全てを諦め、切り捨ててきた彼の中に1つだけ
残っていたもの。
声の正体に彼は気づいていた、けれど馬鹿な事は考えるべきじゃない、
摂理を曲げて幸せな結末に至ることなど無いと叫ぶ理性、けれど彼の心はそれを振りきってしまう
気づいたときには彼はすっかり健康な体になっていた
奇跡だと喜ぶ家族、婚約者、そして少年。しかし喜びは長くは続かなかった
あの日から10年、青年と呼べる姿のまま
一切変化することのない彼に周りの目が次第に変化していく
口さがない人々は彼人間ではないと、何かを引き換えに弱い体を捨て人を捨てたのだと噂した
そんなある日、月のきれいな夜に彼は少年を呼び出す
もう少年は少年ではなく、見た目だけで言えば青年と同じ、いや青年よりすこし年上に見えた
噂を気にしているのかと問う少年、違うと答える彼。気になどするはずもない、噂は真実を
言い当てていたのだから
770 :風と木の名無しさん:2011/11/09(水) 00:17:10.36 ID:obO0eJ8A0
そしてそのことを隠しきれる、ごまかせる年齢を越えてしまったら消えるつもりだった
けれど少年の側にいたいという思いがそれを一年、また一年と引き伸ばし、
とうとう人の噂に立つまでになってしまった
これ以上はもう限界だろう、だから去る前に
一番仲のよかった君にお別れをしたいと語る彼
少年はじっとうつむいてそれを聞いていたけれど、
背を向けた青年に顔を上げる、その頬は涙に濡れていた
去るなんて言わないでくれ、どうしても行くなら自分も
連れていって欲しい、貴方がいないと駄目なんだ、
……好きなんだ、身分差があっても、性が同じでも、それでも好きなんだと、
そう彼に追いすがる少年から、けれど彼はそっと身を離した
君は『此方』には来ることはできない、何もかもを捨てられるほど強くも弱くもないから
だから連れてはいかない、そう言って少年から一歩離れる
月明かりに昼間のように明るい丘の上で彼はとても美しかった、人ではありえないほどに
その姿にとらわれてしまったかのように動けない少年の前で彼の姿がぼやけ、消えていく
やがてもう少しで完全に消えてしまうと思った時、彼の唇がゆるく動く
――ずるいことを承知で言わせてもらうと、僕も君のことが好き だった よ
そうして人から見えぬ存在となった彼は、自由の身となってなおその家の側にとどまり
いなくなった息子の代わりとして養子に入った少年を守護し
年経て彼が亡くなった今も、その子孫と家を見守り続けているという
うん、やはり風邪をひこうがなんだろうが結局自分は馬鹿らしい
無理矢理にでも腹になんか入れてこよう
百鬼夜行抄(20)
天才だよ!
どちらでもかまわないから早く振込先を書くんだ!
すごくいい
途中からすっかり方向性変わってワロタww
漆原友紀の絵でイメージした
萌えを提供していただいてありがてえが、おだいじに
読んでて絵が見えたよ
あなたが神か。
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