2011年01月30日

そっと手を繋いでみた

*9が指定したカプ・シチュに*0が萌えるスレPart20
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1289632869/
@801板

389 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2011/01/30(日) 14:35:52 ID:wVEL57pQO
そっと手を繋いでみた


390 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2011/01/30(日) 18:09:36 ID:TGZSb7wz0
ノックと言うには強すぎる、ガンガンとドアを叩く音がする。
慌てて立ちあがってドアを開けると、そこには寒そうに肩を竦ませて
マフラーに口元を埋める彼が居た。
 
「どうしたの」
「分からないことがあったら聞きに来いって、センセー言っただろ」

そう言いながら見せてきたのは数学のテキストで、
僕は戸惑いを隠さな表情で首を傾げる。

「そりゃあ言ったけど……
 数学のことは、数学の先生に聞いたほうがいいんじゃないのかな。僕は国語しか……」
「センセーのくせにわかんねえの?」
「……いや、」

彼には言うことを聞く気がないのだと察した僕は、緩く首を振って溜息を吐いた。
しかたがないな、と呟きながら彼を国語準備室の中に招き入れると、彼は
ぱあっと明るい顔をしていそいそと入ってくる。

「あったけえ」
「この学校、廊下には暖房がないもんね」

暖房の設定温度を上げ、彼が座れるように机の横に椅子を置いた。
慣れた様子でそこへ座り、彼はぐるぐるに巻いたマフラーを解く。

「それで?どこが分からないって?」
「ぜんぶ。……今まで授業まるまる休んでんのに、
 いきなしこんなの渡されたってわかんねえよ」

ふてくされた顔で彼は呟き、丸めていたせいでクセの付いたテキストの表紙を
ごしごし擦った。尖らせた唇が、かさかさに乾いている。

彼は僕が受け持つクラスの生徒で、二学期までは学校へ来ていなかった。
ほとんど毎日の家庭訪問を経てようやく学校へ来てくれるようになったのだけれど
授業についていけないからと何度も拗ねては僕のところへやってくる。
また学校へ来なくなるよりはと、僕にできる限りのサポートを続けていた。

「うん。そうか、じゃあまずは、簡単なところからだね。最初から少しずつやっていこう」
「少しずつじゃ間に合わないじゃん……」
「だいじょうぶ。何度も言っただろう?」

不安げに瞳を揺らす彼をはげまし、シャープペンを持たせる。
ノートは持ってきていないと言うから、不要になったプリントを渡した。

「この裏に書きなさい」
「ありがとセンセー」

屈託なく言った彼に問題を提示して、彼が躓いたところでやり方を教える。


391 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2011/01/30(日) 18:10:13 ID:TGZSb7wz0
「なんだ、センセー数学も出来るんじゃん」
「きちんと習ったのは何十年も前なんだけどねえ……意外と覚えているものだね」

感心したような彼に昔を懐かしみながら答えていると、
古ぼけたスピーカーから校長先生が僕を呼び出す放送が流れる。

「呼び出しだ。
 ちょっといってくるから、君は次の問題をやっていなさいね。すぐに戻ると思うから」

素直に頷いた彼に微笑み、僕は廊下へ出た。

「ごめんごめん、遅くなってしまったね」

すぐに戻ると言ったのに、随分時間をおいてしまった。
慌てて準備室へ戻ると、問題を解いていたはずの彼が机にうつぶせている。

「……どうかしたの?」

具合でも悪いのだろうか。そう思って近づき、顔を覗き込んでほっと息を吐く。
彼は眠っていた。すうすうと穏やかな寝息を立て、手にはシャープペンを握りしめたまま。
彼の顔の下でくしゃくしゃになっているプリントをそっと引きぬくと、やっておくように
言った問題はきちんと終えている。

「よくできました……と」

机の中から取り出した赤ペンで大きな丸を付け、ふと時計を見上げた。
もうすぐ下校時刻になる。今起こしてまた問題の続きをさせても、半端なところで
終わってしまうだろう。

それならと、時間ぎりぎりまで寝かせておくことにした。
椅子に掛けて置いたままだった上着をそっと彼の背中に掛け、
椅子に腰かけてじっと彼の寝顔を見つめる。

まだあどけなさの残る面立ちを眺めながら目を眇めた。
真夏の暑い日も、雨風のひどい台風の日も、僕は毎日彼の家に通った。
教師としては失格かもしれないが、だから僕は彼に対してひときわ強く思い入れがある。
もっと言うならば、決して生徒に抱いてはいけない感情もあった。

「できれば君が卒業するまで見守っていたかったんだけれどね……」

小さく呟き、彼の顔を覗き込んだ。

それは叶わない。
彼が三年生になる前に、僕はこの学校を定年退職することになっている。
僕の想いもそこでおしまいにしなければいけない。

「最後に、君が学校へ来る手伝いができてよかった。
 ……どうか君が、来年になっても元気で登校していますように」

微笑みながら手を伸ばす。

(これくらいなら、許されるだろうか……)

そっと繋いでみた手は、とても暖かかった。


posted by moge at 21:55 | Comment(22) | 801


この記事へのコメント
  1. いくらで売ってくれるかね
    Posted by at 2011年01月30日 22:13
  2. おおぉ…うぉおお…(ぶるぶる)
    Posted by at 2011年01月30日 22:25
  3. 下から七行目を読んだ瞬間、怒涛のような萌えが襲ってきた
    年の差&淡い両片思いっぽいのがたまらん

    個人的に生徒×教師でお願いします
    Posted by at 2011年01月30日 23:27
  4. 泣いた
    Posted by   at 2011年01月31日 00:21
  5. 将来先生を夢見てる自分にとっては
    まさに夢のような・・・w
    Posted by at 2011年01月31日 00:21
  6. 定年間近とか滾りすぎる
    Posted by at 2011年01月31日 00:28
  7. 美じじぃ(失礼)萌える!
    一人称僕の穏やか声年配さんいいな
    Posted by at 2011年01月31日 00:51
  8. うぉおお…
    なんか感動してよだれ出た
    Posted by at 2011年01月31日 01:06
  9. 小柄な若い先生をイメージしながら穏やかに萌えてたら
    いきなり素晴らしい爆弾きたwww
    Posted by at 2011年01月31日 01:20
  10. これはこれはこれはこれは…
    Posted by at 2011年01月31日 01:59
  11. 優ジジイ好きにはたまらん
    言い値で買おう!!!
    Posted by at 2011年01月31日 02:25
  12. 終盤で年齢萌えが飛び込んでくるとは思わなんだ!素晴らしい
    Posted by at 2011年01月31日 02:35
  13. 先生が定年退職したあとは、年賀状や季節ごとの手紙が細々と続くと良い。

    そして数年後、
    「春から教師になります」
    「先生のような教師になるのが目標です」
    とか書かれているのを見て、なんとなく想いが報われた感じがすると尚良い。
    Posted by at 2011年01月31日 10:38
  14. 美容院で泣くとこだったじゃないか

    これはヤバイ…
    Posted by at 2011年01月31日 11:57
  15. これはやられた!!萌えた責任とって売ってくれ!!
    Posted by at 2011年01月31日 12:00
  16. 米13に萌えの追い打ちをかけられた
    Posted by at 2011年01月31日 14:18
  17. 下7行目から視界がぼやけて、米13で涙腺決壊した

    切ねえ…
    Posted by at 2011年01月31日 14:24
  18. いいものを読んだ…ありがとう
    Posted by at 2011年01月31日 14:28
  19. 怒涛のような萌えと切なさと涙腺崩壊がやってきて私はうわああうわああありがとうありがとう・・!!
    Posted by at 2011年01月31日 15:36
  20. 389と※13 いい話をありがとうございます。
    Posted by at 2011年01月31日 17:03
  21. 定年後も非常勤で留まれる可能性があるんだぜ!!

    小学生の教頭先生のお話の「サボテンの花」思い出した、恋愛とか一切ないんだけど素敵な話。
    その小説家の隠れた名作。
    Posted by at 2011年02月13日 03:40
  22. 鬼才
    Posted by at 2011年06月17日 08:09
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