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@801板
365 名前: 風と木の名無しさん [sage] 投稿日: 2009/04/11(土) 20:02:51 ID:GpyQBpck0
◆月◇日 花吹雪
ご主人様のうかつさといったら裏筋入りのどうしようもないもので、
そんなんだから今日も便座に腰掛けたまま「誰か!誰でもいい!
神よ!紙をください!」なんて両手をあげて叫ぶ事になるのです。
男子トイレ個室におけるトイレットペーパー消費率を侮っちゃいけません。
あそこは戦地です。ちょっと小・中学校では人気者だったからって、個室で
「考える人」ポーズを真似るような行為がバレたとしても美味しくからかわれる
役回りだった頃とは違うのです。
きっときっと、ご主人様を疎ましく思う輩だって潜んでいるに相違ない、と
警戒すべく奮起していた僕なのだけど、ああなんという事だろう、
バケツから水でもなく、ドア下から便所モップでもなく、救いの手は、香りつき
ポケットティッシュの形をとって頭上から降臨ましましたのだ。優雅な薫香を
漂わせ、便所タイルの殺風景さをあたかも秘密の花園に変えるが如く。
ご丁寧にも「水に溶ける!」との説明書き付きで。
ご主人様は歓喜の声を上げつつ「いやあ助かった!地獄に仏だ!」なんて
調子のいい事を言いながら個室から出たけど――ご主人様ちんこは情けのう
ございます、パンツは扉を開く前に引き上げよとあれほど鈴口をすっぱくして――、
一通りキョロキョロして、それから意外そうに、たった一人小便器に向かっている
同級生に話しかけました。「お前しかいないの?」だなんて。
見りゃ分かるでしょうに、確認するのは意地悪な人です。
366 名前: 風と木の名無しさん [sage] 投稿日: 2009/04/11(土) 20:03:54 ID:GpyQBpck0
だってご主人様はなんかフラフラした適当そうな人で、姿勢を正した
そのクラス委員とは真逆の性格で、犬猿の仲なんです、助けてくれるなんて
考えられないのです。
「今のお前?」 「違う」 「別の人?」 「あっち」 「あっち?」 「出てった」、
噛み合うような噛み合わないような、そっけない会話をしながらも極力視線を
合わそうとしないクラス委員。不審に思ってか何とか背中から顔を覗き込もうと
しつこいご主人様。ユニット名は便所エグザイル。
いい加減飽きたのか、「じゃあ、ごゆっくり」と戸口に向かったご主人様。
そうですね、早いとこ追っかければ、探して、ティッシュのお礼を言えたかも
しれません。どのクラスの誰だか分からない人へと。
「オレを助けてくれたの、アンタ?」と無邪気に問い掛けまくったらよかったかも
しれません。ご主人様は感謝を忘れない良い子なのです。
だけど、僕も忘れません。小便器にうつむいて、必死に背けられたクラス委員の
ふっとーしそうな顔よりも目よりも、何より雄弁な、プルプル怒張して緊張のあまり
紫に張り詰めた、あのかわいそうなちんこの事を。
ゆっくりと離れたご主人様がきびすを返したその一瞬、ズボンの、僕らの居る辺り、
クラス委員の彼のポケットからそつじとしてふわりと漂った、くらくらするような、
めまいのしそうに甘やかなあの香りを、薔薇の名残を。
ご主人様忘れないで、使い残しをポケットに捻じ込んで、ほんのひと時共有した
刹那のようなあの香りを。見守ってくれる人がいること、忘れないで。
そしてあの人を「紫のちんこの人」と呼ぶ事を、どうか許してください。
鈴www口www
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