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@801板
139 風と木の名無しさん sage 2011/06/16(木) 01:56:17.97 ID:1k55ycnv0
ビデオを整理してたらカーチャンが撮ってたらしい
世界のすごいマジシャン!みたいな内容の番組が入ってた
ついつい観てしまったけどマジシャンてすごいな
見た目は何の変哲もない広告に蛇口突っ込んだらジュースが出てきて
しかも広告写真の中のジュースが減っていくとか、桶に入れたお湯がなんか
いきなり凍りだすとかもうマジックっていうかブリザド的な魔法にしか見えない
実はああいうマジシャンの中には
本物の超能力者とか魔法使いが混じってるんじゃないかとか妄想してしまう
物心ついた時から自分が他の皆とは違う奇妙な力が使えることに気づいていた少年は
それが一般には受け入れられないものだという事も知っていた
けれどその力もまた自分の一部であると理解していた少年はその力を無かった事にして
生きることはできず、魔法を使いながらも人にそれを悟らせずに生きて行く方法として
マジシャンという職業を選ぶ
有名にならないようにと、正しく魔法と訳されるべきそれを大きな会場で披露することはなく
道端や小さなクラブなどで小銭を稼ぎながら各地を転々として生活していた
ある時いつものように道端でマジックを披露する青年を見たとある少年、
彼は青年の地味だが幻想的なそのマジックに魅入られ、やがて同じように
マジシャンを目指すようになる
元々才能があったのか、
あの青年のようになりたいという憧れからかめきめきと頭角を現す少年、
彼はやがてあの青年に弟子入りしたいと思うようになった
140 風と木の名無しさん sage 2011/06/16(木) 01:57:00.38 ID:1k55ycnv0
日本をふらふらと飛び回る青年を見つけるのは簡単なことではなかったが、
少年の必死の努力によりとうとう青年を見つけ出し、弟子入りを申し出る
弟子を取れるような身分ではないと断る青年だったが、少年のあまりの勢いに、
ならば教えるようなことはないけど付いてくるくらいならいい、と受け入れて
しまった
少年は嬉々として青年に寄り添い、子供の時のままの輝く瞳で、時に
その手伝いをしながら、時に客に混じって青年のマジックを眺めて、という
日々を過ごした
けれど秘密を抱えての関係はやがて破綻する
青年が少年を騙し続ける罪悪感に耐えられなくなったのだ
自分のマジックには文字通り種がない、いくら自分を観察しようとも
少年がそれを真似ることはできない、と少年に吐露する青年
どうせ信じるはずはないと思いながら、自分が魔法を使えることまでも話してしまう
言ってから青ざめる青年だったが、口に出してしまったことは取り消せない、
これでこんな生活もおしまいか、とうなだれる青年を少年がそっと抱きしめる
俺が憧れていたのは、あなたの技術じゃなく、誰よりも客を楽しませようとし、
誰よりもたくさんの笑顔を生み出すあなたの存在そのものなんです、と少年
そのための道具が本物の魔法だろうとタネも仕掛けもあるマジックだろうと変わらない、
いつかあなたの魔法よりも凄いマジックを産み出して、客とあなたを笑顔にしてみせます
そう屈託なく笑いながら言った少年は、ちょうどあの時少年を虜にした青年と同じ年頃だった
そんな師匠と弟子どっかに落ちてませんか
新マジシャン 3 (秋田文庫)