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@801板
696 名前:風と木の名無しさん[sage] 投稿日:2011/04/13(水) 21:36:47.35 ID:vC2sJBZtO
せいれいしていとしを精霊師弟都市と書くと、幻想的かつほもほもしい。
「精霊師弟都市」、そこは精霊たちが住む都市の中でも
ことさら特別な意味をもった都市である。
思念の結晶である精霊は生殖活動を行わないが、その代わり任意の2個体間で
愛や絆(思念)を強めることによって新たな精霊(結晶)を生み出すことができる。
新たな精霊を生むための精霊のつがいは「師弟」と呼ばれ、
精霊達は成長するにつれて他の個体とこの関係を結んでいく。
(なお「師弟」という名前は、精霊がみな人間の男性のような
姿をしていること・先に生まれた精霊が後に生まれた精霊に様々なことを
教え導くことからつけられたものである。)
年頃になった精霊たちが「師弟」の片割れを求めに来る都市、それが「精霊師弟都市」だ。
「精霊師弟都市」には適齢かつ師弟関係を結んでいない精霊のみが集まり、晴れて
師弟となった者と二人でこの都市を出るまでは存分に恋の季節を堪能する。
適齢を迎えた途端に急いで師弟都市へと向かったある精霊。
彼が探しているのは、先に都市入りした同郷の年上精霊である。
「あの人はまだ誰とも師弟になっていないだろうか。」
祈るような想いを胸に、年上精霊のいるという住居へ走る。
師弟都市外での愛の告白は、認められていない。
年上精霊が師弟都市へ旅立ってからの数月、精霊は
激しい焦りと嫉妬に苦しめられながら、ただこの時を待った。
精霊の恋の季節は、その後師弟で共有する時間に比べればとても短い。
師弟都市に来てすぐに師弟関係を結ぶものも少なくなく、そのことが
さらに精霊の心を掻き乱した。
かくして精霊が住居へたどり着くと、そこには既に人気がなかった。
やはり、他に師弟を見つけて街を出た後だったか。
精霊が肩を落として踵を返しかけたその時、扉が薄く開く。
「よかった、やっぱり君だ。」
ドアの先にあったのは、何度も夢に見たその顔だった。
「誰にも会わないように暮らすのって、結構難しいんだね。
……君が来てくれるまでは、誰の誘いも受けないって決めてたから」
いたずらっぽく笑う懐かしい顔に、たまらなくなってキスをした。
せいれいしていとしを精霊師弟都市と書くと、幻想的かつほもほもしい。
精霊の王